はるたまの水溜まり日記

ただ、今ここに在るということ

自粛中のBBQの心理

 自粛中のGWに、50人規模のBBQが、近隣の人の迷惑や警察からの職務質問にも関わらず5時間行われたとの報道があった。心理学的観点から意味づけを試みてみよう。

 バーベキューかぁ、昔良くやったなぁ。いいなぁ

 

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バーベキュー

<報道より>
リーダーの言
・自粛なので行動は自己判断。
・自殺した友人が12人おり、息抜きが必要と思っている。
・呼びかけたら勝手に集まった。半数は僕も知らない人。
参加者の言
・これは付き合いだから。いつもはこういう行動はしない。

 

 リーダーが参加者の半数を初めて会うと言っているところをみると、定期的に行われている会ではなく、何かのオフ会らしい。更に、自殺した人が12人と言うのが、どのくらいの期間か分からないが、仮に2年間に12人と考えると、20~30代の若者の自殺率(10万人当たりの自殺数)は約18人だから、ネット上の3万人くらいの規模の集団と推測することができる。また、通常の自殺率より著しく高い確率で自殺しているとすれば、自殺志願者の集まるサイトのオフ会かも知れない。ちなみに、50代の自殺率は約22人である。

 

議論
・野外で行うBBQは三密の中の2つの密(密着、密集)があるので好ましくはないが、クラスターではない。
・BBQ会場まで各自がマイカーで集まったとは考えにくく、また、わざわざGWに行う事からも長距離の公共交通機関の使用や、乗り合いをしたと考えられ、そこには不要不急による三密が発生するため、望ましくない。

 

心理学的観点からの意味づけ
同調
 呼びかけたリーダーは、「勝手に集まった」と言っているが、参加者は「付き合いで集まった」と言っている。つまり、この集団への帰属の維持のために本人の意志に反して参加しており「同調圧力」があったことになる。LINEなどのオンライン集団は、対人で形成される集団より同調圧力が高くなりやすいことが知られている。
 緊急事態宣言の最中であるにも関わらず、リーダーがBBQをしようと呼びかけた行動によって、参加しないと言えばリーダーの行動に異議を唱えていると受け取られる事を恐れたのではないだろうか。もしも自殺率が比較的高いような凝集性の高い集団であればなおさらかも知れない。このような集団では、リーダーは構成員の自殺を防いでいるつもりだが、リーダー自身が最も集団に依存している可能性が高く、自尊感情を高める場としてオフ会が必要だったのではないだろうか。

 

心理的リアクタンス理論(ブレーム)
 心理的リアクタンス理論は、自由を奪われると自由回復のために反抗したくなるという理論である。交渉において、説得すればするほど受け手が逆の行動を取る事がブーメラン効果として知られており、その根拠とされている。要素としては、脅かされる自由の重要度、割合、程度がある。
 自粛によって脅かされたと感じている自由の重要度、割合、程度を考えたときに、例えば、若者が恋愛を開始しようとして仲良くなりかけていた異性がいたのに、自粛によってデートに誘いにくくなったなどのストレスがあるだろうか。ネットでも恋愛はできると思うが、、あ、だからオフ会が必要だったのか??

 

自殺の対人関係論(ジョイナー)
 自殺の対人関係論によれば、自殺が起こるのは3つの要素が重なったときである。それは、所属感の減弱潜在的自殺能力負担感の自覚である。
 もしこの集団が自殺しやすい人達の集団の場合、潜在的自殺能力は高いかも知れない。つまり、既に自殺未遂をしたことがあって自殺方法を知っているなどである。そのためにリーダーとしては、集団への所属感を維持する事によって自殺を防いでいると考えている可能性がある。それは一理ある。しかし、より上位の社会集団に対しての反社会的行動になっている場合、それはどうなるだろうか。
 生態学的システムモデル(ブレナー)によれば、人を取りまく集団は、直接接するマイクロシステムからメゾシステムエクソシステム、そして社会であるマクロシステムに達する。しかし、この集団が最下層のマイクロシステムに属するときに、より上位のマクロシステムに対して反社会的な行動集団を形成し、そこに所属している事になる。

 そして、このような反社会的集団が継続的に存在する場合、それ以外の人が自粛をがんばっても、長期的に感染率を減らす事ができないのである(

harutama.hateblo.jp

)。
 更に、負担感の自覚とは、自分の存在が他者や社会の負担になっていると感じるものだが、今回の新型コロナによる社会的行動変容では、従来のニートやフリーターといった若者にとっては負担感の軽減につながっていると考えられる。家にいても白い目で見られる機会が減ったからだ。それに対して、若者達の勝手な行動が議論を巻き起こす度に、高齢者達は負担感を増大させているのではないだろうか。更に、新型コロナで亡くなる高齢者達に、その配偶者や近親者がいる事を想像すると、新型コロナによる高齢者自殺の増加が懸念される。

 

楽観主義バイアス(正常性バイアス「自分だけは大丈夫」
 参加者の多くが重症化しにくい20代~30代の若い世代であることもあって、自分たちは重症化しにくい、死なないという楽観主義バイアスが高いための行動と推測できる。
 このような楽観主義バイアスは誰にでも見られるものであり、災害などの緊急時の判断を誤る要因とされるが、精神衛生面で見れば極めて健康的である。自殺の原因として抑鬱状態があげられる。そして、うつを引き起こす要因として最もやっかいなのは「不安」である。つまり、将来に対して悪い方向に推測する習慣である。楽観主義バイアスはそれとは真逆のものであるからこのような発想をする人達は、自殺のリスクは低いだろう。

 

*お断り:情報が少ないため、現実の集団とは一致しないと思われますが、推測をまとめまてみました。実際にBBQをした方々は、不快に感じるかも知れませんが、読み物として楽しんで頂けると幸いです。またもし、ここが違うと教えて頂けるとありがたいです。

BBQ集団の推測まとめ
・大規模なネット上サイトのオフ会らしい。ネット上でやりとりしている若い人達が直接会って恋愛に発展するかどうかの見極めをする会だったのではないか。

・精神的に健康な集団と考えられるが、攻撃のための自殺をする可能性もある。
・ネット上でのリーダーの発信が同調圧力を感じさせた可能性がある。
生態学的システムモデルにおいて、中間層に位置する集団が上位層に対して反社会的な場合、その集団への帰属意識がより上位層の集団への反社会的行動であるとき、更に言えば、ネット上で形成される集団が、現実に関わる社会集団に対して反社会的になった時(元々そうではなかったはずなので)、どう行動すべきか。課題が残る。

 
 早く、若い人達が自由に恋愛できる社会に戻るといいね。
 そのためにも、短期決戦でちゃんとした行動をみんなで取ろう。
 体力に自信があるなら、ハネムーンはスウェーデンに行くといいんじゃないかな。

 

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